2019年07月19日
芸術家の菊池歩さんから出版予定の「タレル・デ・マリア」という本の題字を依頼された。
その本の内容を詳しく聞いたところ、菊池さんが長年担当してきたアートスクール(ほとんどが10歳以下)の子供達の作品を一冊の本にするとのことだった。
その本の内容を詳しく聞いたところ、菊池さんが長年担当してきたアートスクール(ほとんどが10歳以下)の子供達の作品を一冊の本にするとのことだった。
文字もない
言葉もない
説明もない
自由なアートだけ
と言う。
それに加え、「柿沼さんに全てお任せするので作品が文字じゃなくなっても、白紙で提出しても構いません」ときたから困ったものだ。
菊池さんのこの“独特”の発想と展開に、一瞬「どうしよう」と思ったが、何か面白そうな誘いを感じた。
大人やプロからは生み出すことのできないアート集とのこと、普段からFBを通じて菊池さんと子供たちのアート活動に触れていたので、自分なりにイメージが共有ができた。
しかし、はたして題字は私のいつもの書の表現でいいのだろうか?
ある程度読みやすく、万人受けするような毛筆スタイル、「書っぽい」やつではないと思った。さもないと内容と合わない。
当初、頼まれたお題は英語による「Turrell De Maria」
現代アートの巨匠、James TurrellとWalter De Mariaをミックスした菊池さんの造語であった。
ああじゃない、こうじゃないと一ヶ月ほど時間を見つけては妄想し足掻いてみた。
筆?
鉛筆?
マジック?
ひらがな?
カタカナ?
色?
描きたいものを描く。
描かざるを得ないものを描く。
それぞれが自分の“今” 色、造形、言葉、ムーブメントで紡ぎ出されたアート集。
題字は大事だ。
本の名前である。
本の内容を知る以前に多くの印象を与える。
内容と題字の調和をいろいろ考えてみた。
筆から鉛筆、鉛筆からペン、そしてマジック。マジックはいつか極太となり、コピー用紙にガリガリと書きなぐるうちに表現がグラフィティー的になっていた。
そして、何かが降りてきた。
“マスキングテープ”
マスキングをハサミやカッターで丁寧に切るのではなく、手で引きちぎる手法、ちぎっては貼り付け、ちぎっては貼り付けの連続、連続、連続。
ギリギリ、すれすれのところまでテキトウにやってみると面白いと思った。
先ずは、言われた通り英語で表現してみた。
悪くはない。
でもちょっと違う。
何か自分が面白くない。
曲線中心の平仮名だと本の題字としてインパクトに欠けること、そしてマスキングテープによる表現の意味があまり出ない。
そして片仮名表現。
周知の通り平仮名とともに日本独自の文字である。片仮名の造形は、楷書漢字の強さを保ちながらなんとなく現代的で愛らしい。
表現が定まった。
まるで子供が時間も忘れ遊びに集中する感じだった。
「色、構成は煮るなり焼くなりお好きなように」と菊池さんにお任せした。
仕上がりは渋目のピンク!(ローズ?)
今中博之氏の帯文「消えゆくような美しさ・・・・」
項をめくりながら最後まで行くとなぜかまた最初から読みたくなってしまう。
素敵な本だ。
https://good-books.co.jp/books/タレル・デ・マリア-turrell-de-maria/
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